「もっと肘を上げて」
「身体を開かないで」
「前に突っ込まないで」
このように伝えると
子どもは「分かった」と答える。
それなのに、もう一度
動くと同じ形に戻ってしまう。
何度言っても直らない姿を見ると
「話を聞いていない」
「説明を理解していない」
「意識が足りない」
と思ってしまいがちです。
しかし
言葉の意味を理解することと
自分の身体を
そのとおりに動かすことは別です。
頭では理解できていても
本人が感じている動きと
実際に起きている動きが
一致していないことがあります。
身体は目だけで確認しているわけではない🙅♂️

私たちは、身体を動かすたびに
手足を目で確認しているわけではありません。
ボールを見ながらでも
腕の位置や脚の
曲がり具合をある程度把握できます。
これに関わるのが「固有感覚」です。
固有感覚とは、筋肉や腱
関節などから得られる情報をもとに
身体の位置や動き
力の入り具合を捉える感覚です。
運動するときは、視覚だけでなく
こうした身体内部からの
情報も使われています。
子どもの位置感覚に関する研究では
その正確さは幼児期に完成するものではなく
成長とともに発
達していくことが報告されています。
本人の感覚と実際の動きは一致するとは限らない🙅♂️

子どもが「肘を上げている」
と感じていても
実際にはほとんど上がっていない。
「力を抜いている」と思っていても
肩や手には力が入っている。
「真っすぐ立っている」と感じていても
身体は片側へ傾いている。
このようなズレは
本人がふざけているから起こるとは限りません。
人が動くとき、脳は身体の状態や
周囲の状況に関する感覚情報を組み合わせ
動作の結果を
予測しながら運動を調整しています。
予測した結果と
実際に得られた感覚情報の差は
その後の動作調整に利用されます。
そのため、本人が認識している
身体の状態と実際の状態にズレがあれば
言葉で正しい形を説明されても
その形を正確につくれないことがあります。
v
「分かった?」だけでは確認できない🙅♂️

大人が
「今の説明、分かった?」と聞けば
多くの子どもは
「分かった」と答えます。
しかし、この「分かった」は
- 言葉の意味が分かった
- 目指す形が分かった
- 自分の間違いが分かった
- 自分の身体で再現できる
という複数の段階に分かれます。
説明を理解できたからといって
自分の身体のどこが、どの方向へ
どの程度動いているかまで
認識できているとは限りません。
子どもが返事をしたことと、動きを
再現できることを同じにしないことが大切です。
「意識すれば直る」とも限らない💦
動きを直すときに
「もっと意識して」
「そこに気をつけて」
「何度も言っているだろう」
と伝えることがあります。
もちろん、注意を
向けることで変わる動きもあります。
しかし、そもそも本人が
現在の身体の状態を正確に捉えられていなければ
意識するだけで
修正することは難しくなります。
例えば、肩が
上がっている感覚が本人になければ
「肩を上げないように意識して」
と言われても
何を変えればよいのか分かりません。
必要なのは
意識の強さだけではありません。
本人が感じている動きと
外から見える動きの間に
どのような
ズレがあるのかを把握することです。
動きだけを見て原因を決めつけない🙅♂️

同じように
肘が下がって見える子どもでも
原因まで同じとは限りません。
言葉の意味を
理解できていない場合もあれば
身体の位置を
うまく認識できていない場合もあります。
身体の動かし方が分からない場合や
関節の動きにくさ、痛み、恐怖心などが
影響している可能性もあります。
外から見える一つの動作だけで
原因を特定することはできません。
そのため
「センスがない」
「運動神経が悪い」
「話を聞いていない」
と決めつけるべきではありません。
見えているのは
あくまで動きの結果です。
その動きが起きた背景まで考えることで
子どもへの見方は変わります。
子どもは「できない」のではなく、ズレに気づいていないことがある🙌

子ども自身は、大人の指示どおりに
動いているつもりかもしれません。
それでも実際の動きが
変わらないのであれば
必要なのは注意や叱責ではなく
本人の感覚と
実際の動きのズレを理解することです。
言葉を理解できること。
自分の身体の状態を感じられること。
感じた状態を動きへ反映できること。
これらは同じ能力ではありません。
何度言っても
動きが変わらないときほど
子どもの理解力や意識を疑う前に
「この子には、今の動きがどう感じられているのか」
という視点を持つことが大切です。

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