「もっと大きく腕を振って」
「最後までバットを振り切って」
「もっと思い切って動いて」
そう伝えているのに
子どもの動きが小さく見えることがあります。
このような姿を見ると
「筋力が足りない」
「全力を出していない」
「動きに勢いがない」
と考えてしまいがちです。
しかし、本人は力を抜いているどころか
身体のさまざまな場所に
力を入れすぎている可能性があります。
動かす筋肉だけでなく
その反対側の筋肉まで同時に働くと
関節は安定する一方で
動きにブレーキがかかります。
これが「同時収縮」です。
筋肉は一つだけで動いているわけではない🙅♂️

肘を曲げるときには
主に肘を曲げる側の筋肉が働きます。
反対に、肘を伸ばすときには
肘を伸ばす側の筋肉が働きます。
このように、ある動きをつくる筋肉を主働筋
その反対の働きをする筋肉を拮抗筋と呼びます。
ただし、身体を動かすときに
片方だけが働いてもう片方が
完全に休んでいるわけではありません。
主働筋と拮抗筋が
同時に活動することがあります。
これが同時収縮です。
同時収縮によって
関節まわりの硬さが高まり
外から力を受けても
関節の位置を保ちやすくなります。
研究でも、同時収縮は
関節の安定性や動作の正確性に
関わる運動制御の一つとされています。
同時収縮そのものが悪いわけではない🙌

同時収縮は
身体に必要な働きです。
・捕球するときに腕や体幹を安定させる
・片脚で立ったときに姿勢を保つ
・ボールや相手から受ける力に耐える
このような場面では
関節をある程度固める必要があります。
つまり、同時収縮は
「力み」や「悪い動き」
と同じ意味ではありません。
動きを安定させるために
必要な場面もあります。
問題になるのは、動かしたい場面でも
必要以上に同時収縮が続くことです。
安定させる働きが強すぎると
動きを生み出す筋肉と
それを止める筋肉が
同時に強く働くことになります。
アクセルを踏みながら
ブレーキも踏んでいるような状態です。
力を入れているのに、動きは小さくなる💦

例えば、ボールを強く
投げようとして腕全体に力を入れる。
すると、腕を前へ振る筋肉だけでなく
その動きに抵抗する側の
筋肉まで働くことがあります。
本人は一生懸命に力を出していても
関節が動きにくくなれば
腕の振りは小さく見えます。
バッティングでも同じです。
バットを強く振ろうとして
構えた段階から手、前腕、肩まわりを固める。
身体を安定させる働きが強くなりすぎると
バットを動かすために
必要な関節の動きまで制限されます。
その結果
- 腕が伸びない
- 回転が途中で止まる
- バットが身体から出てこない
- フォロースルーが小さくなる
といった動きにつながる可能性があります。
ただし、映像だけを見て
「同時収縮が原因」
と断定することはできません。
実際の筋活動を確認するには
筋電図などによる測定が必要です。
子どもは身体を固めて動きを覚えることがある🧠

慣れていない動きをするとき
人は身体を固めて
動きを安定させることがあります。
最初から必要な筋肉だけを
正確なタイミングで
働かせることは簡単ではありません。
そこで、動きに関わる筋肉を広く働かせ
関節を固定しながら
動作を成立させようとします。
運動学習の初期には
同時収縮が多く見られ
習熟に伴って減少する場合が
あることが報告されています。
また、複数の関節を使う動作では
子どもの筋の共同活動が
成人より高いとする報告もあります。
これは、成長途中の子どもが大人と
同じ筋活動で動いている
わけではないことを示しています。
そのため、子どもの
動きが固く見えても
すぐに
「センスがない」「身体の使い方が悪い」
と判断するべきではありません。
動きを安定させるために
身体を固める方法を
選んでいる可能性があります。
「もっと力を入れて」が逆効果になることもある💦

動きが小さい子どもに対して
「もっと力を入れて」
「全力で振って」
「腕を強く使って」
と伝えることがあります。
しかし、すでに多くの
筋肉を同時に働かせている場合
さらに力を入れさせても
動きが大きくなるとは限りません。
むしろ関節まわりの硬さが増し
動きにくくなる可能性があります。
動きの大きさは
単純な筋力だけでは決まりません。
どの筋肉を働かせるのか。
反対側の筋肉をいつ緩めるのか。
どの関節を安定させ、どの関節を動かすのか。
こうした力の配分と切り替えも関係します。
「力を出すこと」と「全身を固めること」
は同じではありません。
大きな動きより、力の切り替えを見る👀

野球では、最初から最後まで
身体を柔らかくしておけば
よいわけではありません。
反対に、最初から最後まで
全身を固めておくわけでもありません。
・構えているとき
・動き始めるとき
・力を伝えるとき
・動きを止めるとき
場面によって、必要な
安定性と動きやすさは変わります。
大切なのは、力を入れているか
抜いているかの二択ではありません。
必要な場所を安定させながら
動かす場所は動かせているか。
必要な瞬間に力を高め
その後は次の動きへ切り替えられているか。
子どもの動きが小さく見えたとき
すぐに筋力不足や
気持ちの弱さへ結びつけるのではなく
動かす力と止める力が
同時に強く働いていないか?
という視点を持つことが大切です。

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