「腕だけで投げるな」
「下半身を使って打て」
「もっと全身を使って」
野球では
このような言葉がよく使われます。
しかし、「全身を使う」とは
身体中の筋肉へ一斉に
力を入れることではありません。
投球や打撃では、下半身、骨盤、体幹
腕がそれぞれ異なるタイミングで動きます。
すべてを同時に動かすのではなく
先に動く部分と
その動きを受けて後から動く部分がある。
この時間差によって、全身の動きが
バットやボールへつながっていきます。
全身を使うとは「全部に力を入れること」ではない🙅♂️

子どもへ「全身を使って」と伝えると
・脚にも力を入れる
・お腹にも力を入れる
・肩や腕にも力を入れる
このように、身体全体を
一度に固めてしまうことがあります。
しかし、投球や打撃は
重いものを静止した
状態で支える動作ではありません。
短い時間の中で
身体の各部分を順番に加速させる動作です。
全身を一つの塊として同時に回すと
骨盤、体幹、腕の間に
時間差が生まれにくくなります。
見た目には全身が動いていても
それぞれの部位が同時に動いているだけでは
動きが効率よく
つながっているとは限りません。
身体には「動く順番」がある☝️

投球動作では
一般的に骨盤、体幹、上腕、前腕
手という身体の
中心に近い部分から遠い部分へ
最大角速度のタイミングが
移っていく流れが研究されています。
このような身体各部の動く順番を
「キネマティック・シークエンス」と呼びます。
ただし、実際の投手が全員
教科書どおりの一つの
順番で投げているわけではありません。
高校生、大学生、プロを含む
投手を調べた研究では
少なくとも17種類の
動作パターンが確認され
理論上の順番と完全に
一致する投球はありませんでした。
つまり、身体を使う順番には
基本的な傾向がありますが
全員をまったく同じタイミングへ
合わせればよいわけではありません。
大切なのは
各部位を同時に動かすことではなく
前の動きが次の動きを
邪魔せずにつながっていることです。
投球は脚から腕までが一つにつながる💪

投球では
軸足側で身体を前へ運び
踏み出した足で身体を支えます。
その土台の上で骨盤が回転し
体幹、肩、肘、手へと動きが続いていきます。
腕は単独で
ボールを投げているのではありません。
足元でつくられた動きに
骨盤や体幹の働きが加わり
その先にある腕が速く動きます。
ただし、地面から受けた力が
そのまま同じ量で
腕まで受け渡されるわけではありません。
同じ研究では
身体の各部分が自ら力を生み出したり
受け止めたりしながら動作を
構成している可能性が示されています。
「下半身の力をそのまま腕へ流す」
という一直線のイメージだけでは
実際の身体運動をすべて説明できません。
打撃でも骨盤と上半身は同時に回らない🙅♂️

打撃でも、足を着いた瞬間に身体全部を
一斉に回しているわけではありません。
骨盤が動き始め
その後に上半身や腕
バットが続くことで
身体の中心から外側へ
動きが広がっていきます。
骨盤と胸が最初から同時に回れば
上半身が早く投手側へ向きやすくなります。
反対に、骨盤だけが動き
上半身や腕がついてこなければ
動作は途中で分断されます。
重要なのは、骨盤を
先に回すという形だけではありません。
骨盤、上半身、腕、バットが
適切な時間差を保ちながら連動することです。
子どもは身体を分けて動かす途中にいる🙌

子どもの身体は
大人を小さくしただけのものではありません。
成長とともに筋力だけでなく
身体の各部分を別々に動かす能力も変化します。
特に、年齢が低い子どもは
上半身と骨盤を分けて動かすことが難しく
成長に伴って両者の角度差が
大きくなる傾向が報告されています。
子どもの骨盤と
上半身が同時に回るからといって
意識が足りないとは限りません。
身体を部分ごとに調整する能力が
まだ発達の途中である可能性があります。
大人の完成された動きを
そのまま子どもへ求めると
形だけをつくろうとして
身体を固めることにもつながります。
「下半身から動け」だけでも伝わらない🙅♂️

全身の連動を説明するとき
「下半身から動く」
「骨盤を先に回す」
という言葉が使われます。
しかし、下半身を早く動かせば
それだけで全身が連動するわけではありません。
骨盤が早く開きすぎれば
上半身とのつながりが崩れる場合があります。
反対に、上半身を
残すことだけを意識すると
骨盤と胸の間を必要以上にねじり
動作が止まることもあります。
身体の順番は、前の部位が完全に
止まってから次が動くリレーではありません。
実際には、複数の部位が重なりながら動き
その中で加速する
タイミングが少しずつ移っていきます。
「脚、骨盤、胸、腕」と
区切って考えることはできますが
実際の身体は一つにつながっています。
全身を使うとは「力をつなぐこと」🧬

全身を使うとは、身体のすべてへ
最大限の力を入れることではありません。
すべての部位を
大きく動かすことでもありません。
足元で生まれた動きに骨盤が続き
体幹、腕、バットやボールへと
加速のタイミングが移っていく。
その途中では
動きを生み出す部分だけでなく
身体を支える部分や
速くなった動きを受け止める部分も必要です。
見た目の大きさではなく
各部位の動く
タイミングがつながっているかを見る。
「全身を使え」と伝える前に
どの部分から動きが始まり
どこで止まり
どこが早く動きすぎているのかを考える。
全身を使うとは
全身を同時に動かすことではなく
身体全体が
一つの流れとしてつながることです。

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