子どもの投球を見て
「肘が下がっている」
「もっと肘を上げて」
「肩より高い位置から投げよう」
と伝えていないでしょうか。
たしかに、投球中の
肘が低く見える子はいます。
しかし、映像に映った
肘の位置だけを見て原因まで肘にあると
判断することはできません。
「投球」は
・足
・骨盤
・体幹
・肩甲骨
・腕
これが連動する全身運動です。
・踏み出した足が着く
・骨盤が回る
・体幹が回る
・肩、肘、手が続く
最後にボールが指先から離れる。
この流れの途中で
タイミングがずれた結果
肘が低く見えている可能性があります。
必要なのは、肘だけを
決められた高さへ動かすことではありません。
肘が低く見える前に、身体のどこで
流れが途切れたのかを確認することです。
肘の高さを地面だけで判断しない👀

投球中の身体は、地面に対して
真っすぐ立ったまま回転するわけではありません。
ボールリリースへ
向かう過程では
体幹の回旋に加えて
踏み出し足側へ傾く側屈も起こります。
体幹が傾けば、両肩を
結んだラインも地面に対して傾きます。
そのため、画面上で
肘が肩より低く見えても
体幹に対する上腕の
位置まで低いとは限りません。
肩の外転角度と肘に
加わるトルクの関係は
体幹の側方傾斜によって
変化することが報告されています。
したがって、肘の位置は
地面に対する高さだけではなく
体幹と肩の傾きを
含めて評価する必要があります。
見るべきなのは
肘が地面からどの高さにあるかではなく
体幹に対して
上腕がどの位置にあるかです。
肘は投球動作の「結果」として動く💪

投球動作では
踏み出し足の接地後
前脚による支持、骨盤の回転
上部体幹の回転、肘の伸展
肩の内旋へと動きが進みます。
肘は、この流れの途中にあります。
身体の回転に対して
腕の準備が遅れれば
腕は身体の後ろへ残ります。
反対に、腕を早く上げすぎれば
下半身や体幹の動きより先に腕が動き始めます。
どちらの場合も
全身から腕へ力をつなげにくくなります。
そこで肘だけを高くしても
- 足を着くタイミング
- 骨盤が回り始めるタイミング
- 胸郭が回るタイミング
- 腕が投球方向へ進むタイミング
は変わりません。
肘の高さは原因ではなく
全身の動作が連動した結果として
現れている場合があります。
足が着いた瞬間を確認する👀

肘が低く見えるときは
ボールリリースの瞬間だけではなく
踏み出し足が
着いた瞬間まで映像を戻します。
確認するのは
- 骨盤がすでに開きすぎていないか
- 胸まで捕手方向へ向いていないか
- 投球腕が身体の後ろへ残りすぎていないか
- 反対に、腕だけが早く上がっていないか
- 頭や上半身が大きく突っ込んでいないか
投球動作の臨床的レビューでは
足の接地時における
肩の外旋状態が適切でない場合
肩や肘に加わる力・トルクが
増える可能性が示されています。
また、その改善方法として
肘だけではなく、ストライドや腕の通り道を
見直すことが挙げられています。
大切なのは、足が着いた瞬間に
肘を特定の位置へ固定することではありません。
身体が回り始めるタイミングと
腕が投球方向へ進むタイミングを合わせることです。
肩甲骨と腕は一緒に動く💪

腕を上げる動作は
上腕骨だけで行われるものではありません。
上腕骨が動くときには
肩甲骨も胸郭の上を動きます。
少年野球選手の投球を
三次元解析した研究では
肩が最大外旋へ向かう局面で
肩甲骨には後退
上方回旋、後傾が確認されています。
その後、肩が内旋していく局面では
肩甲骨も前方へ動きます。
つまり、投球中の肩甲骨は一つの
場所に固定されているわけではありません。
腕の動きに合わせて
位置や向きを変えています。
そのため
「肩甲骨を寄せたまま投げる」
「胸を張ったまま投げる」
「肘を高く保ったまま投げる」
と特定の形を固定すると
肩甲骨と腕の
自然な連動を妨げる可能性があります。
肩甲骨には、体幹から投球腕へ
力を伝える土台としての役割があります。
肘を動かす前に、肩甲骨と上腕が
連動して動けているかを見る必要があります。
胸郭の回旋は「大きさ」よりタイミング🤔

身体を使って投げるには
骨盤と胸郭の回旋が必要です。
しかし、胸を大きく
回せばよいわけではありません。
足が着く前から
胸が捕手方向へ開けば
身体の回転が腕より先に進みます。
腕は身体の後ろへ残り
追いつくために肩や肘を
急速に動かすことになります。
少年投手を対象とした研究では
体幹の回転が早い動作と肩の過度な
水平外転との関連が指摘されています。
反対に、胸郭を
動かさずに腕だけを振れば
下半身から生まれた
動きを投球腕へつなげられません。
重要なのは
「胸を開くな」
「もっと胸を回せ」
という二択ではありません。
足の着地後に骨盤が動き
その動きに胸郭と腕が
続いているかという順番です。
側屈は悪い動きではない🙅♂️

投球中に身体が横へ傾くと
「身体が倒れている」
「真っすぐ立って投げよう」
と修正されることがあります。
しかし、体幹の側屈は
投球動作に含まれる動きです。
側屈を完全に
なくせばよいわけではありません。
一方で、過剰な
反対側への体幹側屈は
肘に加わる外反方向のトルクと
関連することが報告されています。
問題は、側屈があること自体ではなく
- 側屈が始まるタイミング
- 側屈する方向
- 側屈の大きさ
- 回旋との組み合わせ
- 投げ終わりまでバランスを保てるか
正面から見た肘の高さだけでは
この違いを判断できません。
正面と横、可能であれば
後方からも映像を確認し
体幹の動きと
合わせて見る必要があります。
全員を同じ肘の位置へそろえない🙅♂️

肩の高さ、腕の長さ、胸郭の動き
柔軟性は選手によって違います。
投げ方にも個人差があります。
そのため、すべての子どもの
肘を同じ高さ、同じ角度、同じタイミングへ
そろえる必要はありません。
肩の外転角度が
低すぎても高すぎても
肘に加わる負荷が
変化する可能性があります。
また、適切な角度は
体幹の傾きにも影響されます。
映像だけで肘の角度を
正確に測ることも困難です。
二次元映像では、撮影位置や
身体の向きによって見え方が変わります。
そのため、通常の練習映像では
「何度が正解」と断定せず
全身のタイミングと腕の
通り道を確認する方が現実的です。
小学生は筋力より先に動作の土台をつくる🏠

成長期には、身体の大きさだけでなく
投球動作や関節に加わる負荷も変化します。
2018年に発表された縦断研究では
投手を始めた少年51人を登録し
測定では、各選手が投げた10球の速球から
30項目の動作と力学データを分析しています。
その結果、成長に伴って
- ストライドの長さ
- 踏み出し足の位置
- 骨盤と体幹の分離
- 肩の外旋
などが変化していました。
肩と肘に加わる力や
トルクも年齢とともに増加し
特に13歳以降で
大きくなる傾向が確認されています。
研究では、思春期前の選手は
筋力や出力を急いで高める前に
身体の動き、柔軟性、腕の
通り道を改善することが提案されています。
その後、適切な動作を身につけた段階で
筋力やパワーの向上へ進むという順番です。
小学生の今は、速い球を
投げるための形を急いで完成させるよりも
全身を連動させる
土台づくりが優先されます。
肘が下がった原因が疲労の場合もある💦

試合の序盤では問題がなかったのに
後半になると肘が低くなることがあります。
この場合、技術だけではなく
疲労も考える必要があります。
ASMIは少年投手に見られる疲労の兆候として
- 球速の低下
- 制球の低下
- 上体が起きる
- 肘が下がる
- 投球間隔が長くなる
などを挙げています。
疲労が疑われる場合は、フォームを
その場で直して投げ続けさせるのではなく
投球を中止して
休ませることを推奨しています。
「肘が下がったから上げろ」ではなく
「なぜ途中から肘が下がったのか」
を考える必要があります。
疲労した状態で、さらに肘を
上げたり腕を強く振ったりさせても
根本的な解決にはなりません。
肘を直す前に確認したい6項目‼️

子どもの肘が
低く見えたら、次の順番で確認します。
- 踏み出し足が安定して着地しているか
- 足が着く前に骨盤や胸が開いていないか
- 足が着いたとき、投球腕が極端に遅れていないか
- 体幹が過剰に横へ倒れていないか
- 肩甲骨と腕が連動して動いているか
- 試合や練習の途中から変化したのであれば、疲労していないか
この確認をしたうえで、必要な部分だけを修正します。
肘は投球動作から
切り離された部品ではありません。
足、骨盤、胸郭、肩甲骨、上腕の
動きがつながった先にあります。
肘の形を先に決めるのではなく
身体全体の流れを整える。
肘を無理に上げるのではなく
腕が自然に通る動作の順番をつくる。
これが、中学・高校で
身体が大きくなり
球速が上がったときにも
全身を使って投げるための土台になります。






































































